昨日、調整にいらしたお客様との話しの流から、私の工房で販売している楽器の話になり、「佐々木さんはどのような特徴の音色の楽器を仕入れたり、取り扱ったりしているのですか?」みたいに質問されました。

 ほとんどの演奏者は、「音色」をとても意識しています。しかし、私の考え方としては、「音色」は色々な結果の最後に付いて来る、表面的な現象なのです。

 例えば、人の絵を描くとします。または、人の立体モデルを作るとします。我々のような素人は、ついつい表面だけをなぞりがちです。しかし、専門家は人体の骨格を理解し、筋肉の付き方を考え、その上に皮膚を被せ、そして色を着けたり服を着せたりさせます。

 楽器も同じなのです。重要なのは「構造体」なのです。もっと正確に言うのなら、「発音楽器として理にかなった構造体」なのです。だから私が楽器を仕入れるときには、最終的な音色の事はあまり考えません。

 楽器としての構造が理にかなっていると、当然のことながら発音が良く、バランスも良く、音量もあり、さらにダイナミクスもあって、そして結果的に良い音色として調整することが可能になります。逆に、構造的に不適格だと、いくら一見音色が良くても、いくら調整しても音のバランスが悪かったり、音が籠もってしまったり、音量が出なかったり、調整ではどうしようもない限界が存在してしまうものなのです。服を着替えるように、弦を取っ替え引っ替えしている人も多いのですが、実は表面的な音色が変わっているだけで、実は最も重要な本質(発音・レスポンス、バランス、音量、ダイナミクスなど)は変わっていないのです。

 だから、自分の耳をあまり信用せず(自分で判断できるのは、楽器の表面的な事だけだからです)、自分が信頼しているきちんとした専門家の紹介の楽器を購入すべきなのです。

関連記事: