よく、「この弦(例えばA弦とか、またはD弦とか)の音色を、もっと明るくしたいから”***弦”に換えるのはどうか?」みたいなことを尋ねられたり、提案されたりすることがあります。
確かに、弦を換えると一番手っ取り早く音に変化が出ます。しかし、それで解決できるかというと、そんな単純な話ではないのです。
表面的な、それもごく一部の範囲では求める音色に変わったとしても、それによってダイナミクスが失われたり、一弦だけレスポンスが違ってしまったり、また一弦を交換したことで他の弦に悪影響が出ることはごく普通のことです。一弦だけ換えて、それ以外の音には変化は出ないような事は物理的に不可能だからです。
だから我々専門技術者は、「全てのバランス」を考慮した上で調整を行います。これは楽器の音の仕組みを把握しているか、または数多くの経験値を持っているかのどちらかでしかできない、とても難しいことなのです。
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