私がよく、「綺麗な楽器が入荷しました」とか「美しい楽器が・・」とか書いています。しかし、それは楽器のニスの事ではないのです。

 私の工房で販売している楽器限らず、ほとんどの方が楽器を見るポイントは、外観です。すなわち、ニスの状態なのです。そして、ニスが綺麗な場合、または自分が想像している「良いニス」のイメージ、例えば、「飴色のニス」とか「琥珀色」とかのイメージと合った場合、楽器そのもののではなく、「ニス」を見て楽器を判断してしまうのです。

 しかし、ニスは大きな修理をしたときに、綺麗にレタッチし直したり、部分的に塗り重ねることは普通です。もちろん、良い意味でです。

 従って、私が「綺麗な楽器」と言っているのは、ニスの話題では無く(もちろんニスも含まれていますが)楽器本体の作りの話なのです。この辺りを、絶対に勘違いしてはいけません。

 例えば、酷い場合には、古い楽器の響板の割れの修理跡が酷い楽器に、透明ニスをこってりと塗っている楽器をよく目にします。そうすると、楽器の割れの修理跡の凹みが埋まって、素人目にはきちんと修理されている楽器に見えるのです。
 さらに、そのような透明ニスをこってりと塗った状態を、「飴色のニス」と勘違いしている人もずいぶん多いのです。

 いずれにせよ、私が言いたかったのは、「綺麗な楽器とは、楽器本体の事です」ということです。くれぐれも、楽器を見るときには、ニスのイメージに引きずられないようにしてください。

 もちろん、的確なニスの修正技術で、ニスが補修されていること自体は、良いことです・

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