膝を軽く「コン」と叩くと、脚がビクっと動く。
これが、演奏の本質です。すなわち、「聴衆という生物の、生理的反応を引き起こす操作」を行う行為なのです。
生物学を多少なりとも習った現代人にとって、「膝を叩くと、脚がビクっと動く」事象は、何も不思議なことではありません。しかし、もしもその仕組みをしらない、古代の人ならば、膝を叩いた私の事を、神秘的な力を持った人間と思うことでしょう。場合によっては、神がかった力を持っていると感じるかもしれません。
すなわち、自分自身の生理的反応を、自分自身の何らかの価値判断(例えば、驚愕観とか、宗教観とか、芸術観とか)に当てはめて、ある虚像を築き上げたわけです。これが芸術観の本質なのです。
すなわち、芸術感とは個々の生物体が、自分に起きた生理的反応(現象)を基に作り上げる虚像(良い意味でです)であり、それは個々の生物体によって様々なのです。
すなわち演奏とは、科学的な行為なのです。脚をビクっとさせたかったら、科学的に理にかなった神経部分に刺激を与える必要があります。叩くポイントがちょっとずれただけで、脚は動きません。