テレビの音楽番組であるヴァイオリニストが演奏していました。ヴィブラートと大きくかけて、とても気持ちを込めた演奏をしていました。
ところが、そのヴィブラートが汚いのです。
おそらく、そのヴィブラートの音を聴いて、私のように「汚い」と思う方は少数派かもしれません。それどころか、多くの方は「ヴィブラートが大きく、よくかかっている音」と感じていることでしょう。
それでは私が、そのヴィブラートの何に「汚い」と感じたのか? それは、その演奏家が大きな(感情的な)ヴィブラートをかけたことで、楽器が微妙に動いてしまって、音が「カッ、カッ、カッ、カッ」と途切れてしまっているのです。しかし、おそらく多くの方は、その途切れ途切れの音を、ヴィブラートの音と勘違いしていることでしょう。
本当の(理想的な)ヴィブラートは、音は途切れません。
このような「カッ、カッ、カッ、カッ」と途切れるヴィブラートが発生する一番の原因は、下手な奏法の「痙攣ヴィブラート奏法」です。指板が縦方向にブレてしまっているのです。それで、ヴィブラートごとに弓の摩擦力が途切れて、「カッ、カッ、カッ、カッ」となるのです。
しかし今回の演奏家のヴィブラートは、綺麗な(理にかなった方向の)ヴィブラートでした。すなわち、演奏技術は素晴らしいのです。
それでは、そんな演奏技術が素晴らしい運動をしているのに、なぜヴィブラートが「カッ、カッ、カッ、カッ」と途切れてしまっていたのかというと、それは弓の性能が低いからなのです。
弓の性能が低いので(もちろん本人は夢にも低いとは思っていないことでしょう)、弓を浮かせ気味に、早めのスピードで弾いているのです。だから、ヴィブラートをかけたことによって生じたわずかなネックの上下運動が、弓の摩擦力を低下させてしまって、「カッ、カッ、カッ、カッ」と音が途切れてしまったのです。
ほとんどの方は、この「カッ、カッ、カッ、カッ」という音を、ヴィブラートの音色と勘違いしています。
演奏は、きちんと科学的に分析できるのです。
私は演奏家批判は一切していません。才能がある人が、間違った考え方(常識)にによって、その才能を発揮できていないことが勿体なくてしかたないだけのです。
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