ヴィブラートの音質には、基本的に2種類が存在します。大きく分類すると、「馬毛と弦との間の摩擦力に変動のないヴィブラート」と、「摩擦力に変動のあるヴィブラート」です。
この2つの違いは、慣れてくると音を聴いただけでも判るくらいの違いがあります。
「摩擦力に変動のないヴィブラート」とは、単音のボウイングをしている間に、指によって弦長を変えて、出る音に周波数変化を起こす奏法です。すなわち、弓と弦との摩擦力に、全く変化は無いのです。
このような理想的なヴィブラートは、体格ががっちりしていて、指も太いような外国の演奏家(巨匠)に多く見られるような、力が抜けた奏法で見受けられます。音の雰囲気としては、滑らかで自然です。
一方「摩擦力に変動のあるヴィブラート」は、次の2つにさらに分類できます。
一つは「痙攣ヴィブラート」です。これは私のホームページでも説明していますが、ヴィブラートをしようとするあまり、楽器を縦に動かしてしまって、弓と弦との摩擦力が変動してしまい、音が瞬間的にかすれてしまっているヴィブラートです。
もう一つは、弓の性能が低く、弓がバウンドしてしまう事で、ヴィブラート中に摩擦力が瞬間的に変化してしまって、音が瞬間的にかすれてしまっているヴィブラートです。音の雰囲気としては、「カッ、カッ、カッ」と途切れる音がするのですが、人によってはそれを豊かなヴィブラートと感じる人もいる事でしょう。
意外と後者の「摩擦力の変動のあるヴィブラート」の方が、ヴィブラート(本当はヴィブラートではなくて音のかすれです)に派手さがあるので、けっこう受けが良かったりする事もあります。このような演奏スタイルは、細身の女性演奏者がパワフルに演奏するときに、見受けられたりします。また、音大学生や若い演奏者が必至に演奏しようとしたときに、このような「摩擦力の変化があるヴィブラート」になっている事も多いです。
聴いている人がどちらを好むのかは、人それぞれですが、音に違いがある事は確かです。
関連記事:
- 自分のヴィブラートの音色がイマイチだと思っている方は
- Q&Aのヴィブラートのグラフを追加
- 汚い音のヴィブラート
- 上手なヴィブラートは良い音程と直結する
- ヴィブラートの仕組みを勘違いしている人がプロにも多い