意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんし、また、がっかりされる方もいらっしゃるかもしれませんが、はっきり書いておきます。
私は、新製品の弦の情報とかを積極的に収集してはいません。というのは、幾つかの理由があります。
・新発売の弦を全て試すのは不可能です。
もちろん、楽器マニアのように、ただ単に弦を楽器に張って、単純な感想を言うだけだったら簡単です。しかし実際には、「調整との関連」、「楽器との相性」、「ヴァイオリン~チェロまで」等々、その組み合わせは無限に近いくらいの膨大な数になるからです(その証拠に、使い慣れたドミナント弦でさえも、調整や楽器との相性で、新たな新鮮な側面を覗かせる事も多いのです)。
・金銭的にもきついです。
実験とか試用は、基本的に実費で行います。メーカーから試用品が与えられるなど、特に私のような小さな工房ではあり得ません。従って、弦を何十本もテストするというのは簡単に行える事ではありません。
・基本的には色鉛筆の色と同じなのです。
例えば、子どもとか、アマチュアは100色セットの色鉛筆セットとかを喜んで使います。しかし、玄人の絵描きにとっては、そんなに多くの色は必要ありません。「基本的な色の組み合わせ」で色を作り出すからです。
弦も基本的には同じなのです。ある基本的な弦の応用として、別の弦の特性を考えます。だから新しい弦が出ても、物珍しさだけで飛びついたり、または自分の調整のノウハウを変えたりはしないのです。
もちろん、新しい弦を使わないと言っているのではありません。新発売の度に、一々、飛びついたりはしないのです。なぜなら、新発売の弦が特別優れているわけではないからです。