以前オーディオ雑誌を読んでいたら、スピーカーに付いての記事が書かれていました。その中に、「スピーカーの性能は、科学的に説明できないくらい複雑です。例えば、同じ周波数特性のスピーカーがあったとして、それが同じ音がするかというと、違うのです」と書かれていました。
全く同じ事が弦楽器にも当てはまります。
それでは弦楽器の性能は、科学では本当に説明できないのでしょうか?
まずは話しを単純にするために、上記スピーカーの話題に戻りたいと思います。先の雑談記事では、「同じ周波数特性のスピーカーでも・・・」と書かれています。しかし、すでにここが矛盾点です。
「たった一枚の周波数特性グラフ」を見て、それがそのスピーカーの「全科学的特性」だということ自体が無謀なのです。例えば、その周波数特性グラフはどのような手法で計測したのか? 音圧と周波数特性は? 発音特性は? 指向性と各周波数との関連性は?
おそらく細かく、「スピーカーの特性」を調べていったら、その要素は数10~100もあげることが出来るのではないでしょうか? そのくらい「ある製品の科学的特性」を調べるというのは難しい事です。
すなわち、先ほどの最初の話しに戻りますが、「同じ周波数特性のスピーカーがあったとして、・・・」と書かれていますが、たった1~2枚のグラフからは「同じ特性」とは言い切れないのです。逆の事も言えて、「仮に本当の全く同じ特性のスピーカーがあったとしたなら」、その音は同じになるはずです。
弦楽器でも全く同じなのです。
弦楽器が科学的に説明できないのではありません。説明するための要素が余りにも多く、複雑なので、科学的考察をまとめ上げるにはあまりにも無茶なだけなのです。
弦楽器も(演奏も)、原理的には物理の法則の上にだけ成り立っているはずなのです。感覚論とか、芸術論とか、能書き(論)を構築する行為は心地よいです。なぜなら、言ったもの勝ちで、誰からも否定されないからです(答えも無いので、否定も無いです)。そして、自分が酔いしれてしまうのです。
しかし弦楽器の本質は、「楽器としての構造論(製作論とはちょっと違います)」にこそあります。すなわち、「楽器としての理」なのです。
私がそれに関して判っているか? と問われたら、全く判っていません。しかし、考察における中立的な場に立っているとは思っています。そういう位置に立とうとする努力だけは、誰よりも意識的に行っているつもりです。
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