以前にも「復刻盤レコードの音が悪い」という記事を書きました。
もちろん「復刻盤」にも色々な品質の物があります。例えば、丁寧に保管されていたオリジナルマスターテープから、丁寧に復刻されたレコードなどは、おそらくオリジナル盤と似たような品質をたもっているはずです。具体的な例としては、私が先日購入したL.コーガンのチャイコフスキーVn協奏曲のYUKIMU300枚限定版(シリアル番号付き)などは、信頼性が高いです(オリジナル盤を持っていないので比較はしていませんが)。
しかし、多くの復刻盤レコードは、オリジナル盤と比べて音質が劣っているようです。マスターテープ自体が残っていなかったり、音響エンジニアが変な操作をしてしまったりしているからです。
今回私がサンプルを上げるレコードも、復刻盤の音の悪さが際立っています。今回比較音源を上げるのは、オイストラフ演奏のベートーヴェンのソナタです。レコード自体は選曲的に全く同じではありませんが、音としては同じ物です。
再生はELPレーザーターンテーブルにて再生しました。新品の復刻盤の方が若干音量が低かったので、両音源とも-3dBでノーマライズ作業をおこなって音量を同じにしています。
オリジナル(またはオリジナルに近い)盤
新品の復刻盤
ジャケットの写真も、復刻盤(右側)の方がぼやけています。楽器の詳細が全くわかりません。おそらくオリジナルのレコードジャケットの写真をコピーしたからでしょう。
音に関しては、MP3に圧縮してアップロードした音でも、明かな違いを感じていただけると思います。全く違うのです。復刻盤は、新品にもかかわらずノイズがかなり多く、さらに左右チャンネルのバランスも乱れています。
復刻盤だけの音を聴いて、「これがオイストラフ」と感じていたら、大間違いなわけです。事実私も、CDのオイストラフや、それ以外の古い巨匠達の演奏を聴いても、これまでは魅力を感じませんでした。もしかしたら、このように劣化した音を聴いていたのかもしれません。
今回の記事で私が主張したい内容は、オーディオマニアとしての「レコードの音質」についてではありません。「演奏とは、聴く側の音質によって印象が全く変わっている」という事です。すなわち、演奏側と聴く側の両方の要因が密接に関連し、ある印象(すなわち良い意味での虚像)を作り出すのです。これが音楽の本質であり、芸術の本質です。
補足:今回の比較は、ジャケットを見れば全く同じレコードの比較にはなっていません。しかし、全く同じレコード(オイストラフ親子演奏のモーツァルト二重奏曲)の比較でも、同様の差を感じました。
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