チェロって、構造的にヴァイオリンと比べてとても弱いのです。楽器の大きさの割に、響板の厚みが相対的にかなり薄いのです。またネックも相対的にかなり細くて弱いです。
だから作りの悪いチェロは年月が経つに従って指板が下がったり、響板が凹んだりして変形します。そのような作りの悪いチェロは当然の事として、通常のチェロもそいう変形はごく当たり前の事と言ってもよいくらいなのです。
ところがカントゥーシャ作のチェロの素晴らしい事、「全く問題なし」でした。
チェロに限りませんが、カントゥーシャ作の楽器(ヴァイオリンやヴィオラ)の多くが、長い年月が経っていても楽器に大きな変形が出てしまっていることはほとんどありません(事故による響板の割れとか、ニスの傷みとかの話はまた別です)。
これはカントゥーシャの製作理論と、製作精度が素晴らしいからなのです。私は彼の工房で、その理論と製作を全て学んでいますので、なぜカントゥーシャ作の楽器の変形(指板下がりだとか、響板の歪みだとか)が出ない(正確に言えば、”出にくい”)のかが判るのです。
私はカントゥーシャ工房に行くまでは、無量塔藏六氏の元で勉強もしていましたので、そこそこ「ヴァイオリン製作」は知っていたつもりでしたが、カントゥーシャ氏の製作理論には驚きました。
私の例えとしては「葉書の理論」です。
そのような楽器の音が良いのは、当然のことなのです。