以前から私は、「良い音で聴く努力」という事を推奨してきました。なぜならば、同じ演奏でも、音の品質によって、感じ取れる印象がガラリと変わるからです。本当に「ガラリ」とです。

 つい最近にも、音楽に詳しい友人(木管楽器を演奏しています)に、私がSPレコードから録音したカザルスのCDをあげて聴いてもらったのですが、「所有していたCDと聴き比べたら、CDのチェロはオモチャのように聞こえた」との感想でした。

 私が驚いたのは、木管楽器奏者(アマチュア)なのにカザルスの無伴奏チェロ組曲のCDも所有していたということです。さすがです。また、弦楽器奏者ではないぶん、逆に弦楽器の音に対して客観的な意見だと思います。

 このように、カザルスとかオイストラフとかの超有名な巨匠達の音でさえも、ほとんどの方は本当の音(に近い音)を知らないで論評しているのです。これは、厳し言い方をするなたば「間抜け」です。

 例えば、あるネット上の評価で、オイストラフ演奏の「ベートーヴェン作曲ヴァイオリン・ソナタ」において、伴奏のオボーリンのピアノの音が良くない(演奏が下手)という事が書かれていました。私からすると、「バカ言ってんじゃないよ!それは再生音が低いから、その程度にしか感じ取れなかったのですよ。高音質で再生したオボーリンの伴奏と音の表現は凄いですよ!」って言いたいです。

 CDやレコードの音でさえ、このように「良い音」を知らずに、論評(能書き)をしている人だらけなのです。

 それが、さらに複雑な「楽器」となると、もう酷すぎます。無責任で、商業的、オカルト的な情報に振り回されて、それが「楽器」の音だと思い込んでいるのです。

 実際の良いヴァイオリンの音、ヴィオラの音、チェロの音って、全然違いますよ! それは、あなたの今の価値観の外にあります。

 さらに言います。実際のあなたの演奏能力って、全然違いますよ! もっとずっと上です。オーディオの音を追求するのと同じように、もっとお金をはたいて、きちんとした楽器を手に入れなければ、「ご自分の真の能力を発揮する」スタートラインにさえ着けないのです。

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