私は以前にも、ELPレーザーターンテーブルで再生したカザルス演奏「無伴奏チェロ組曲」などの高音質さを紹介したりしてきました。

 ELPレーザーターンテーブルはレーザーピックアップを使っての非接触再生を行うので、これまでのレコードプレーヤー(または蓄音機)とは違った特徴が有るのです。

 そのメリットは、SPレコード再生においても基本的には(LPレコード再生と)共通です。特に、「非接触再生」のメリットは大きいです。SPレコード盤はLP盤よりも傷みやすいので、歴史資料的に貴重な盤面を傷めないで再生できるというメリットが、ELPレーザーターンテーブルでのSP盤再生においては一番のメリットとなります。

 音質面での「ELPレーザーターンテーブルでのSP盤再生」におけるメリットは次の2つがあげられます。
1.針が擦れる音が出ない。
2.チェロのような低音の再生音質が素晴らしい。

 しかし逆の事も言えます。ELPレーザーターンテーブルでの再生は、盤面の傷などの情報も、盛大にノイズとして再生してしまいます。

 通常の蓄音機では、記録信号以外の低音ノイズ成分や高音ノイズ成分は再生されないように、うまい具合にフィルターがかかるのです。正確に言えば、蓄音機の針の動きや振動板の物理的制限の範囲の信号しか原理的に記録できないので、その逆の再生という行為では、うまい具合に信号だけを再生できるのです。

 すなわち、SPレーコード再生においては、蓄音機での再生が理にかなっているのです。

 それではELPレーザーターンテーブルでのSPレコード再生が何のメリットがあるのかというと、先にも述べましたような内容です。
1.盤を傷めない。
2.チェロのような低音の再生音質が素晴らしい(SP盤には、低音の信号は高音信号と比べてきちんと精確に記録されています)。
3.蓄音機では再現できないような再生が可能。

 一方、デメリットとまでは言わないまでも、次のような点もあげられます。
1.LPレコードと比べて、もともと高周波数音質(高音)の質が低いSPレコードでは、ELPレーザーターンテーブルでの再生が特別に大きなメリットとは思えない。
2.盤の劣化などのノイズが盛大に再生されてしまう。

 カザルス演奏の「無伴奏チェロ組曲」のように、ELPレーザーターンテーブルで再生した方が効果的な場合にもあるのですが、ヴァイオリン演奏のような比較的高音の記録信号の場合には、ELPレーザーターンテーブルでの再生が必ずしも絶大な効果を発揮するとは言えません。

 ELPレーザーターンテーブルが、万能なプレーヤーというわけではないのです。SPレコード再生のために導入を検討されている方は、ぜひ注意してください。

ちなみにサラサーテ演奏の「タランテラ」を紹介します。このSP盤は状態が良いので、サラサーテのヴァイオリンの雰囲気がよく記録されていると思います。あえてほとんどノイズ処理をせずに(軽めのデクリッッカー処理を施しています)アップロードしてみました。

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