以前から何度も書いていることですが、私は、オーディオ装置による音の分析は、楽器の音の分析の簡易版だと考えています。すなわち、「オーディオの音の考察が出来ないようでは、さらに複雑な楽器の音の事を語る資格はない」とさえ思っています。
もちろん、楽器の音をまるで詩人のように感覚的に語るのでしたら、こんなに心地よいことはありません。しかし、それではアマチュアと同じであって、技術者としてそれでよいのでしょうか? もちろんこれは私自身への問いであり、他の技術者のことをどうこう言うつもりはありません。
私は常日頃から、自分自身に対してこのような問いを繰り返しています。
さて、話が少々ずれました。
1976年録音のメータ指揮の「マーラー5番」のレコードとCDの音の違いがどこにあるのか、分析してみました。オーディオ装置で聴き比べた時の、私の感覚では、「中低音の透明度が、ELPレーザーターンテーブルで再生した音の方が、圧倒的に優れている」と感じました。私はこの感覚を「空間表現」と感じています。一方、高音に関してはさほど差が無いように感じました。
ちなみに、比較データはCDのフォーマットの44kHz-16bitに合わせています。下の波形は、マーラー5番の第一楽章出だしのトランペットソロ~オケのトゥッティの部分です。
レコードの音とCDの音の差分(低い周波数帯域)
100kHz弱~400Hzくらいまでの周波数帯域で、レコードの方に明らかに大きな信号が入っています。これがレコードのノイズなのか、それとも録音時のホールや機材の音なのかは今回は深くは考察しませんが、私は意味のある信号だと感じています。
レコードの音とCDの音の差分(高い周波数帯域)
レコードの音を44kHz-16bitにリサンプリングしたためという事もあるかもしれませんが、20kHzまでの高周波数帯域において、両者の差はほとんど無いと考えられます。若干ピンクが多く見えるのは、CDのレベルが僅かに大きかったせいです。
上チャンネルの右1/3位の位置(トゥッティの部分)に緑色の縦線が見えますが、これがレコードの「プツッ」という雑音です。
両者ではコントラバスのピツィカートの響きもかなり違うのですが、おそらく今回表示された100Hz弱~400Hzくらいの周波数帯域の差なのだと思います。
このような視覚情報と、自分の聴覚情報を頻繁にすり合わせることで、応用(考察)が利くようになるのです。たぶん。いつか。
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