私の工房では音響測定用のマイクロフォンに、Earthworks M50マッチドステレオペアというマイクロフォンを使っています。一言で言えば、広帯域&フラットな特性のマイクです。

 こう言うと、多くの方から、「さぞ高音が綺麗に録音されるのでしょうね」みたいに言われるのですが、確かにそうではあるのですが、実は、感覚的にはとても地味な感じの音なのです。

 本当に良い音って、意外と地味です。というのは、フラットなため、特に刺激的な部分が無いからなのです。

 これって、カントゥーシャの楽器の音とも共通する感覚だと感じています。カントゥーシャ作の楽器も、ちょっと弾いただけだととても地味に感じるのです。だから、良い楽器の音の本質を勘違いしている人には受けが良くないみたいです。

 それでは、上記のEarthworks M50という音響測定用マイクロフォンの性能って、どこにあるのかというと、「どの(周波数帯の)音でもきちんと録音できる」という正確さ、安定さにあるのです。

 これはカントゥーシャ作の楽器でも同じで、どの音でもレスポンス良く素直に音が出せる(ダイナミックレンジも有ることが重要です)ので、演奏者の技量によって、いくらでも味付けが出来るという事なのです。まるで単なる宣伝文句に聞こえるかもしれませんが、本当の意味での良い楽器ってそういう物です。

 だから楽器を選ぶときに「自分の好みの音」って感じで選んではいけないのです。重要なのは、楽器の構造であり、それに伴って必然的に生まれる音響特性(ダイナミックレンジも含め)です。これは、なかなか演奏者には見えてこない部分です。なぜならば、演奏者とは主観的な行動をする(すべき)人だからです。一方我々技術者は、客観的でなければなりません。

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