先日も工房にいらしたお客様から、「YouTubeの比較動画でも、音色の違いが判る」と言っていただけました。ネット上にアップロードした動画データは圧縮しているために画質も音質も劣化しています。さらに、再生する側のパソコンの音響装置によっても差が出てしまいますので、私としては「音の違い」が判ってもらえるのか、常に不安がつきまとっています。しかし、可能な限り高音質で録音しているつもりです。
ちなみに、私が普段使っているマイクロフォンは次の機種です。
1. Earthworks社 “M50″: 音響測定用のマイクロフォンで、3KHz~50KHzまでの帯域をフラットに録音することが出来ます。YouTubeにアップロードしている比較動画は、基本的にこのマイクロフォンで録音しています。癖の無い音が特徴です。
2. AKG社 “C414-XLII”: 発表会や演奏会の録音に使っています。
3. AudioTechnica社 “AT835ST”: ステレオガンマイクです。製作工程を撮影するときにENGカメラ(現在はSONY PDW-700、PMW-200)に付けた状態で収録しています。音質重視のマイクではないので、さすがに音楽ものの録音は厳しいです。
4.SCHOEPS cmc5 + MK5ステレオペア: 弦楽器録音の定番なので導入したのですが、特性に癖がありすぎて、私には使いこなせません。
5. その他のマイクロフォン: Earthworks社 “M30″、AudioTechnica社 “AT825″、SONY社 “ECM-77B”、”ECM-88B”、等。
私の「マイクロフォン」の思い出、雑談
中学生~高校生頃の思い出のマイクは、AIWA製のダイナミックマイクロフォンです。買ってもらったコンポーネントオーディオセットと一緒に購入した安物のダイナミックマイクロフォンでした(型番さえ覚えていない商品)。それをカセットデッキに繋いで、よくギターの多重録音をしたものです。懐かしいなあ。
大学生時代は、「SONYのマイクロフォンが最高なんだ」と思っていた時期です。もちろん使っていたのは家庭用のECM-969、ECM-979とか、ECM-23Fとかでした。そういえばあの頃は、C-450とかC-350とかに憧れていたなあ。
しかし学生オケの演奏会の時に、完成したばかりの「つくばノバホール」に吊られていたSANKEN CMS-2(?)の高音質に、「業務用マイクロフォンって凄いんだな」と感動したことを今でも覚えています。ちなみに当時は海外のマイクロフォンは驚くほど高価な時代でしたので、眼中にはありませんでした。
ドイツから帰国してちょっと経った頃(2000年以降)は、バブル崩壊の影響か、国産のマイクロフォンはすっかり衰退し、その代わりにAKGとかDPAとかSCHOEPS、EARTHWORKSとかのあこがれの「洋物」の価格がずいぶん下がってきた時代です。あこがれの「銘器」にちょっと無理をすれば手が出せるようになってきたのです。
新興メーカーのRODEなどが低価格のマイクロフォンを積極的に販売しだしたのもこの時期です。私もRODE NT-1000とかで演奏会を録音したこともあります。
マイクロフォンの性能は向上し、しかし実売価格はぐんと下がってきたのです。しかし、皮肉なことに低価格なのに比較的高性能なデジタルメモリ録音機が普及し、高級機材による「高音質録音」よりも、「お手軽録音」の方が流行ってきたのが最近の風潮です。メモリレコーダー内蔵のマイクと、数十万円もするマイクとの違いが極端には出ない時代なのです。しかし、明らかな「違い」もあることは確かです。その差を感じて(知って)求めることが幸せなのか、それとも知らないまま人生の終焉をむかえることが幸せなのか・・、これは弦楽器にも言えることです。
私は、「知りたい!」このまま死にたくない!
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