これまで何度も、「42cm以上の大きなヴィオラはさぞ低音も出るのでしょうね・・」って感じの会話になったことがあります。
ヴィオラの大きさと低音の豊かさが、単純に比例していると思い込んでいる人がとても多いのです。もっと言えば、ヴィオラ本体の容積が低音の出方に比例していると思い込んでいる技術者もとても多いです。
しかしそんな単純なはなしではありません。
なぜならば、どのサイズのヴィオラでも「弦は共通」だからです。すなわち、大きなヴィオラでは弦の張力が高くなり、小さなヴィオラでは弦の張力は低くなります。もちろん、ピッチは同じです。
このような物理的な変化まで考えている演奏者や弦楽器技術者は意外と少ないのです。もっと感覚的に考えている人が多いと感じます。
さて私の今までの経験では、40.5cmくらいのヴィオラの方が弦の発音(レスポンス)が良く、多少柔らかい音で低音を感じやすいです。これは弦の張力が若干低いことが影響しています。
一方42cm以上くらいの大きな楽器になると、明らかに弦の張力の高さを感じます。このようなヴィオラの音は力強さに繋がります。
ただ42cm以上くらいのヴィオラの場合、楽器寸法に比例した厚みで楽器を設計してしまうと、とても重くて詰まった音のヴィオラになってしまうのです。そのような「重くて大きなヴィオラ」が多いことも事実です。そのようなヴィオラからは鼻が詰まったような音しか出ません。
いずれにせよ、ヴィオラの大きさと低音の鳴りは単純には比例しません。色々と複雑な要因が関わって、ヴィオラの音だとか弾きやすさは決まるのです。
だからヴィオラはとても難しいのです。
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