私の工房に初めて試奏にいらっしゃるお客様にとても多いのですが、ボウイングの弓を持つ右手の手首が折れ曲がっているのです。
私はそれを「ぶら下がりの奏法」と呼んでいますが、弓をコントロールしようとするあまり、弓を持ち上げてしまっているのです。
さらに、そのボウイング形態に行き着いた理由を説明すると、弓が弱いために、無意識に弓への圧力を掛けない奏法として、弓を持ち上げてしまっているのです。
本人は、弓を高度にコントロールしようとしているらしいのですが、それは全くの見当外れです。なぜなら、「圧」がかけられないので、弦を表面的に撫でる事しか出来ないからです。
事実、本当に上手な、音も良い奏者のボウイングを観察してみてください。右手首が大きく折れ曲がってはいませんから。
右手首を真っ直ぐに伸ばすことで、自然と右腕と右手の甲が一直線になり(ほんの少しは手首は曲がりますが)、それによって右腕の重さが自然と弓に乗るのです。
これが「自然な圧力」です。別の表現をすると「脱力」ともいえます。地面に立つときに力んで立っている人はいませんが、体重分の大きな力で地面を押しているのです。
そのためには「理にかなった、弓竿の腰の強い弓」という道具が必須なのですが、その意味をきちんと勉強している演奏者や、業者が皆無に等しいのです。教育自体が存在しないと言っても良いかもしれません。その証拠に、私が30年以上も主張しているのに、ほとんど無視状態だからです。
良い音を追求したかったら、または自分の殻を破ってみたかったら、是非とも “真の意味での” 良い弓を購入されることをお勧めします。
30分後には音が確実に変わりますよ。なぜならば、きちんとした物理現象だから正直なのです。
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