「圧力を掛けて」とアドバイスすると、音の出はじめ(フロッシュ寄り)で「ギギギッ」って雑音が出てしまうのを悩んでいる初級者が多いです。
なぜ「ギギギッ」って音がするのかを分析してみましょう。
それは、「ギ」と音が出た瞬間に、もう一度弦を強制的に押さえ直して「2番目のギ」が出て、さらにその次の瞬間にさらにもう一度強制的に弦の振動を押さえ直して「3番目のギ」が出てしまっているのです。
正しいボウイングは、最初に発音した弦の振動を持続ドライブをする感じです。そのためには連続(一定)の速度で弓が動く必要があります。
しかし初級者の場合には、弓の動きが不安定(ギクシャクしている)なので、弦の振動をストップさせてしまうのです。だからその都度に「ギッ」という雑音が出るのです。ようするに、弓への圧力の大きさの問題ではなく、弓の動きが不安定なのです。
それでは弦の発音(音の出はじめ)を雑音無く発音するためにはどうするのかというと、次の順序で行います。
1.弓竿にしっかりした圧力をかける(腕の重さくらいで十分です)。
2.摩擦力を利用して、馬毛で弦を引っ張る感じ。
3.これ以上弦を引っ張るのは限界というくらいまで弦を引っ張る。
4.ほんの少しだけ、弓の圧力を抜く。
5.すると、張っていた弦が弾かれて音が出る(発音)。
6.発音した瞬間に、連続した速度のボウイングで、弦の振動を持続する(後押しする感じ)。
この運動を一瞬のうちに行います。アップも原理は同じです。
弓道の弓を満月のように引いて、矢をパッと離すイメージです。ただし、弓矢と違うのは、矢の場合には指を「パッ」と指を離して矢が放たれた後には何もしないのですが、弦の振動の場合には、「パッ」と弦を解放して「発音」が開始された後に、連続して矢を押し続けるイメージです。
関連記事:
- 弦と駒の振動 ~ ハイスピード撮影
- ハイスピードカメラによるチェロの開放弦の運動撮影
- 弦と駒の運動のハイスピード撮影
- 「弦に圧力をかけたら音の響きを殺してしまう」という考え方は嘘です
- 楽器の良い音とは、弦を大きく振動させると言うよりは、楽器の響板をドライブするイメージ