よく、「良い楽器は、弾いている自分が感じるよりも、音が遠くまで届く(飛ぶ)」と言われます。
この仕組みには、弓側の要素と、楽器本体の要素があります。
今回は楽器本体の性能側の「音が遠くまで届く」仕組みを説明します。
つい先日、「音楽専用ホールの特性」と、「マイクの性能と音」についての記事を書きました。実はこの二つの記事の内容が、良い楽器の音と深く関連しているのです。
まずは上記の二つの記事を読んでください。そうすると、答えは自然と導かれます。
良い楽器とは、低音~中音~高音まで自然に出る楽器です。しかし演奏者は高音の方を感じやすいのです。
だから中低音が出ないで、高音だけが出るような楽器に対して、「音が出る(音が大きい)」と感じるのです。
その逆に、良い楽器は高音はもとより、中低音まで自然に音が出ているのですが、そういう楽器の音は一見地味に感じます。だから慣れていない演奏者は、そんなに音は出ていないと思いながら演奏しています。
しかし音楽ホールで演奏すると、ホールの特性上、中低音の音域が届くようになります。一方、高音の音は吸収されたりしてすこし柔らかめになる傾向にあります。
すなわち、元々中低音が出ていない楽器の音は、あまり聞こえなくなるのです。音が痩せてしまうのです。
一方、元々全域にわたって出ている楽器の音は、演奏者の高域の感覚よりも中低音が伝わるので、「遠くまで音が届く」となるわけです。豊かな音、音量感のある音に聞こえるのです。
補足:今回説明した楽器側の要因以外の、弓の性能の要因もとても大きいです。
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