先日、私の工房のお客様がソロ演奏される演奏会を聴きに行きました。

 「音の通り」を確認したくて、わざと最後部座席で聴きました。楽器の音の程度が低いと、最後部座席は音が薄っぺらになってしまうのです。これが「遠くまで音が届かない」とか「音が痩せる」という表現の楽器なのです。

 このような音が出るのは、もちろん楽器自体の良さとかと高度な調整が必要なのは当然として、もっと重要なのは弓の性能なのです。腰が強い真の意味での良い弓を用いて、理にかなったボウイングを行うことによって、楽器の底まで振動させるような朗々とした音が出るのです。

 擦れた、表面的な演奏ではないのです。だからオケに埋もれてしまうこと無く、遠くまで物理的に音が届くのです。

 だからといって、弓さえ良ければ楽器の質は低くても良いと言っているのではありません。弓の性能が良くなると、今度はそこで初めて楽器の本質が見えてきます。逆の事も言えて、弓の性能が悪い人は、性能の低い楽器を選んでしまうのです。

 今回の演奏会の音を聴いて、私の感覚と技術の方針は大筋では間違っていないと確信しました。60歳過ぎて今更言う事でもないかもしれませんが。

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