以前にも書いた事がありますが、ドミナント弦が安物弦で、程度が低いと思い込んでいる人がとても多く感じます。

 しかし、良い楽器にドミナント弦を張ると、驚く程良い音が出ます。要するに、楽器との相性であって、どの弦が優秀というわけではないのです。

 その相性は、調整も含まれていますから、楽器ユーザーが取っ替え引っ替え弦を交換して、判るほど単純な世界ではないのです。だから、我々プロの技術者が存在するわけです。

 先日、私が聴きに言ったヴァイオリンとヴィオラの二重奏演奏会のヴァイオリンも、ドミナントで調整したヴァイオリン(古いフランス製)でした。私が販売、調整した楽器なので、隅々の特徴まで把握しています。

 もの凄いパワフルかつ繊細な音色でした(正確に書くと、ダイナミックレンジが広いので表現力が高いのです)。おそらく弦の能書きをSNSで書き散らしている人達には想像も出来ない音だと思います。

 何度でも言いますが、どの銘柄の弦が優れているとかの話はないのです。高価な商品を性能が高いと思い込んでいる人は、何も判っていない人とも言えます。

 逆の事も言えて、楽器(+調整)との相性から、高価な弦(例:エヴァピラッツィGoldとか)を張ることもあります。

 これらは調整の技術の話なのです。

 一つだけ言えるのは、楽器の造りが悪いと、どの弦を張ってどんなに調整を施しても、イマイチにしかなりません。

 だから私は、「楽器を自分で選ばないで信頼できる技術者に紹介して貰いましょう」と主張しているのです。

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