弦楽器を撮影する時には、雰囲気を重視した撮影と、カタログ(書籍等)の掲載を目的とした形式撮影があります。

 雰囲気を重視した撮影とは、「楽譜や弓と一緒に置かれた構図」とか「ピアノの上に何気なく置かれた構図」とか、「ケースに入れられて、蓋が開いている構図」が多いです。練習時の、何気ない一瞬を写した感じの写真です。

 一方、形式撮影は、正面、裏側、側面、渦巻き等、まるで製図のような構図です。そして影や反射なども可能な限り出ないように撮影するのが腕の見せ所です。色も正確な色でなければなりません。正直言って、素人撮影では無理だと思います。

 「素人撮影は無理」と書いてしまいましたが、それでもコスト的な意味で、我々弦楽器技術者側が自分で撮影しなければならないことも多いのです。

 その時に、背景は何色がベストなのか? 私の経験ですが書いてみます。

白バック:
 白バックは露出が難しいです。ストロボのちょっとした反射が悪影響を及ぼすこともあります。さらに、白い背景を汚さないで管理するのがとても難しいのです。

黒バック:
 黒バックは照明のテカリが出やすいです。テカリを出さないためには高級品のビロード布を購入するのですが、これがまた高くて驚く程です。安物のビロード調の布ではテカリが出てしまいます。
 さらに黒バックで撮影した楽器は、輪郭の影部分と背景が同化してしまいがちです。だから雰囲気は良いのですが、後で切り抜いたり(マスクをかけたり)しにくいのです。

グレーバック:
 私がお勧めしたいのは、上記の中間の「グレーバック」です。使いやすく、撮影後の加工もしやすいです。

グラデーショングレーバック(グラペ):
 グラデーションのついたグレーバックです。これも商品撮影では使いやすいです。

 

 撮影のコツは、楽器と背景との距離を空けることと、ストロボをダイレクトに当てないという事です。もちろん三脚は必須です。
  ちなみに上で述べた「背景色」とは撮影時の背景であって、楽器の輪郭にマスクをかけた後の写真加工後の背景色の事ではありません。

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