先日、ある方が私の工房で60万円弱(税別)の弓を試奏して、結果、とても満足して購入してくださりました。実際、試奏している本人も、横で聴いている私も「ゾクッ」と鳥肌が立つような、演奏の表現力が即、生まれたのです(この方だけに限りません。皆、それと同じような効果が出ます)。

 その方の話では、「実は、昨日別の楽器店で、あと少しで180万円の弓を購入するところでした。危なかった」とのこと。「今になって冷静に考えてみると、現在自分が使っている弓よりも性能が低かったかも・・」と言っていました。

 その方に、「あの店は値段をぼったくっていたのでしょうか?」みたいな質問を受けたのですが、そうではありません。それがどちらかと言えば普通なのです。皆、「弓の性能の理論」を知らないで仕入れて、良いつもりで販売し、そしてそれを知らないで購入して、そして知らないまま満足して使っているだけなのです。

 もちろん、満足できているのであればそれで良いと思います(本当の事を知らなければ、ですが)。

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