最近、レコードの人気が高まっているそうです。そしてその感想を聞くと、「暖かみのある音」とか「演奏者の心が伝わる」、「落ち着く」みたいなのを多く聞きます。中には、「レコードジャケットが大きくて、インテリアとしても活用しています」、なんて女性もいました。

 もちろん、それで良いのです。音(または音楽)の本質は、それ自身が最初から持っている情報量よりも、聴いた側が後から付加する「価値観」の方がより大きいからです。だから、手間のかかる再生装置ほど、味わいのある音に聞こえるのです。

 それなら、弦楽器においても同じなのか? 楽器や弓の性能が悪くても、思い入れのある(または自分が良いと信じ込んでいる)楽器や弓ならば、良い音に感じて、結果的に満足できるのか?

 半分は、その通りです。しかし半分は、「それでは限界がありますよ」というものです。いや、単なる音の評価だけでなく、「演奏の向上」という運動の要素も入りますから、「それでは限界がありますよ」という要因はもっと大きいはずなのです。

 ただ、「思い入れ」とか「思い込み」とか、または「苦労の末に」、「手に入れにくい」とか「高かった!」とかいう価値観(努力とか苦労とか、愛着とか)は、音を感じる上でとても大切な要因であることは間違いありません。

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