電車の中で時々、若い人が席を譲ろうとしたときに、かなりの確率で「いえ、けっこうです」とか「もうすぐ降りるので大丈夫です」と言われている事があります。私もこれまでに何度か経験した事があります。

 若い人が席を譲る行為は、とても勇気がいる行為です。事実私自身も、何度か断られているうちに、「相手は迷惑に思っているのではないだろうか」とか「どうせまた断られて、自分が恥をかいてしまう」と勘ぐるようになりました。

 だから私は、卑怯者で、最初から座らなかったり、声をかけないで次の駅で降りる振りをして座席を立ったり、または目を合わせないで座り続けたりする事もあります。自分でも、何て卑怯者(臆病者)なのだと、自分自身に嫌気が差す事も多いです。

 私ももうすぐ席を譲られる側の年齢に近づいています。我々の義務は、若い人の勇気に応えてあげる事ではないでしょうか?

 以前、あるお婆さん(といっても、まだピチピチしている年です)が、ある若者から席を譲って貰ったときに、「あら、本当に助かったわ~。ありがとうね」みたいに、感謝の言葉を発していました。この一言で、若者の勇気のある行為(善意でも偽善でもありません。単なる常識のはずです)が、実るわけです。

 もちろん、年配者の体力の高さとか、健康を考えてあえて座らない人が多いという事も判っています。しかし、若者のために、「ありがとう」と言って、席を譲って貰う行為も、とても大切な行為だと思うのです。施しを貰うのではありません。社会をつくる、先輩としての義務としてです。

関連記事: