私の経験ですが、良くない楽器を使っている人、楽器の事を判っていない人に限って、雄弁に「音色」を語ります。

 なぜなら、楽器の音響的な性能(音量、バランス、ダイナミクス、レスポンス、周波数特性、安定性、継続性、等々)は、具体的に、残酷なほどに結果が出ます。

 しかし「音色」に関しては、自分の感覚でいかにでも言えるのです。自分自身をごまかす事だって、できるのです。厳しい言い方をするならば、自分の行動を正当化する、最後の砦とも言えます。

 私自身、「音色」という感覚的な言葉を使うのは、できるだけ最後にしています。可能な限り物理的な表現をし、または可能な限り客観的観測をし、自分自身を客観的に見つめ直すことを心がけています。そしてそれが技術の本質と思っています。これは演奏者側でも同じはずなのです。

 

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