先日、ある方から「自分の楽器の音響特性を客観的に計測して、演奏に役立てたい」という質問がありました。
まず最初に私がアドバイスしたのは、「そう簡単には判りませんよ。色々やっている私でさえ、判っていませんから」というアドバイスです。私はこれまでにかなりの時間とお金をかけて、楽器の様々な特性を調べてきました。その私でさえ、「計測結果と実際の楽器の特性」について、はっきりしたことは言えないのです。
だから、私の様に泥沼に脚を踏み入れる覚悟がなければ、中途半端にお金と時間を費やしてしまうだけになってしまう可能性が大きいのです。
だからといって、「測定しても無駄ですよ」とは言いません。そこそこのお金と時間をかけて、自分の楽器を客観的な眼で見ようとした、その人にしか得られない何かがあることも確かなのです。
やりもしないで、知ったかぶりして偉そうな事を言っている人よりも、実際に自分の手を泥で汚して「結局何も判らなかった」と言える人の方が、何かを得ているはずなのです。必ず。
さて、本題です。どうやって楽器の音響特性を測定するか? もちろん、本気でやろうとすると、数百万円は当たり前の世界です。それは現実的ではないので、「できるだけ安く、しかしある程度本格的に」という範囲でアドバイスします。
1.計測用マイクロフォン
BEHRINGER ( ベリンガー ) / ECM8000 2本 (約5,000円弱/1本)
計測は1本だけで行いますが、2本揃えていたら録音にも活用できます。注1
2. マイクロフォンケーブル
3. ブーム式マイクロフォンスタンド(安いものでは2,000円弱からあります)
4.FFT解析ソフト
シェアソフトの”FFTAnalyzer” (5,000円)
5.録音機
できるだけ高性能なポータブルレコーダー(例 ZOOM H6など)。ファントム電源のマイクを繋ぐことが出来る機種でしたら、既にお持ちのポータブルレコーダーでも大丈夫かもしれません。
おそらく、たったこれだけで、とりあえずご自分の楽器の音を、グラフに表示することは可能です。その表示したグラフをどう解析するかが難しいのです。その辺りに関しては、私には質問しないでください。簡単な話ではありませんから。
最後に無責任な事を書くようですが、上記の「セット」を私は使ったことがありませんので(私はもっと本格的な物を使っているので)、その精度や使い勝手などに関して一切責任はもちません。興味のある方は、ご自分の自己責任にて、試してください。
注1: このマイクロフォンのような「スモールダイヤフラム(録音振動板の直径が小さい)」のマイクフォンは、ノイズが大きめなのが欠点ですが、大音量に大して強いです。だから楽器の比較的近くに(30cm~2mくらい)オンマイク気味に設置して録音すると、とても良い音で録音できます。
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