先日、「安く、楽器の音響測定をする方法」という記事を書きました。私が東京ヴァイオリン製作学校で細々と音響実験を行っていた時期と比べて、何て簡単に「音響測定グラフ」をとりあえずは表示できるようになったのでしょう。当時苦労した体験をした身としては、とても驚きです。

 ただ、「音響測定グラフの表示」と「考察」とは全く別物です。

 例えば、つい先日、Aというアナログプレーヤーの音と、Bというアナログプレーヤーの音の違いを、測定してグラフから解析しようとしました。

 楽器と違って、常に一定の音を出力できるので、音響測定としては一番簡単な部類に入ります。そして、Aの音とBの音は、一般の人にはあまり違いは判らないかもしれませんが、オーディオマニアには結構な差を感じる音でした。

 さて、その音響測定グラフを比較すると・・・。確かに微妙な差はあります。だから、知ったかぶりをするのならば、それっぽいことは言えます。しかし、グラフだけを見て、元の音を(音の差を)イメージできるか?と問われたら、私にはできません。

 単純なオーディオ装置の「客観的考察」でさえ、この難しさです。まして、弦楽器となると、難しさはその10~100倍はあると思います。

 なぜなら、弓の性能だけでもどれほど音が変わるのか、また、弓の奏法(圧力のかけ方)一つでも音質はがらりと変わります。弦の種類、松脂、湿度、そして何よりも楽器の調整でどれほど音が変わるかというのは、私の工房で調整された方なら判ると思います。このように、弦楽器の「不確定要素」はとても大きいのです。だから難しいのです。

 そして最大の難問は、「弦楽器の良い音」を誰も知らないということです。

 「ストラディヴァリ?」・・・「お気楽な事言ってるんじゃありませんよ。あれは価格がみな高いだけで、ピンからキリまであるのです。決して音響的には特別な楽器ではありません。」

 

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