「楽器」とは何か?というと、空気を振動させるための道具です。そして、「良い楽器」とは何か?というと、様々な要素があります。例えは、「周波数特性」、「演奏のしやすさ」、「音量やダイナミクス」等々です。そしてのそれら数多くの要因のひとつに、「エネルギー効率の高さ」というのもあります。

 楽器とは、ポエム上のきれい事では無く、現実の物質的な構造論なのです。

 さて、漠然と「楽器」という物を眺めると、ある特徴があることが判ります。それは、「振動板」と、「振動板を支える土台」に分かれていることです。すなわち、ゴム風船のように、「楽器全体が振動板」というような楽器はとても少ないという事実です。

 多くの方は、「楽器全体が鳴る」という事を理想的なことだと思い込んでいるのですが、実はそれは、間違った考え方なのです。具体的に言うと、例えば、「ヴァイオリンの裏板を振動させて、裏板からも音を出す」と言っている人もいますが、それはちょっと勘違いです(裏板も振動しているので音は出ていますが)。

 話がずれてしまいましたが、ヴァイオリン族の楽器を研究するためには、楽器一般を眺め回すと、そのヒントが見えてくるのです。

 先に述べましたように、多くの楽器は、振動板と振動板を支える土台から成っています。振動板は、軽くて薄いです。そして振動板を支える土台は重くて厚めなのです。それらの材料も、振動板が軽くて、しかし強度の強いドイツ唐檜(ドイツ産という意味ではありません)材が用いられていることが多く、土台部分には重くて丈夫な広葉樹材(カエデ材とか、菩提樹、ポプラ材、ローズウッド、ハカランダなど)が用いられることが多いのです。

 この仕組みは、ヴァイオリンから、ギター・リュートから、ピアノ、ティンパニー、そしてオーディオスピーカーに至るまで、ほぼ共通しています。

 特に、木材を用いて作られた楽器の場合、ドイツ唐檜を用いる振動板の割合が極めて高いという事実です。それほど優秀な素材なのです。

 そして「振動板を支える土台」関しては、さらに難しい話になります。弱すぎては、振動板をドライブする事が出来ませんし、分厚いコンクリート塊のように強固すぎても音は出ません。この辺りに関してはとても難しい話なので、ここでは出来ませんが、一つだけ言えることは、「振動板の土台」という考え方が重要ということです。

 このように、「振動板」と「振動板を支える土台」という視点から楽器を観察し、そして演奏することで、どの部分を「ドライブ」させるかという物理的な感覚が芽生えると思います。演奏の根源は、芸術的な行為ではなくて、物理的な操作以外の何者でもないからです。

 

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