楽器とは何か? 皆さん考えたことがあるでしょうか?
何となく、振動させるものであるという事は認識していると思います。すなわち、響板(振動板)から成っている総合体が楽器です。
それでは響板(振動板)って、どんなものでしょうか? おそらく皆さんのイメージは、薄くて軽い、板状の物だと思っていらっしゃる事でしょう。それは間違っていません。
振動板とは、「振動させやすい物体(板)」です。
ところが、弦楽器と振動板(響板)では、両者において矛盾があるのです。
弦楽器という物は、全ての音階の音を大きな音で、どの音も素直に出せる事が前提です。ところが振動板とは、振動させやすくするほどに、ある共鳴モードが生まれてしまうのです。すなわち、振動板とは周波数特性的にムラだらけなのです。
だから楽器製作者は、「鳴りやすい楽器」と「どの音も平均して出やすい楽器」という相反する音の追求に苦労するのです。
例えば、響板が厚めの楽器を作れば、音の出方は平均化されて安定した音が出ます。しかし、振動しにくいので低音が出にくくなって、鼻が詰まった感じの音になってしまいます。さらに、発音も鈍くなってしまいます。
一方、薄めの響板の楽器の場合、一見音が大きく感じるのですが、鳴る音と鳴らない音の差が激しくなって、安定した演奏が不可能になります。この一例が「箱鳴り」であり、または「酷いヴォルフ音」もその一種です。
それでは「振動しやすさ」と「共鳴周波数の分散(調整)」という相反するものを両方得ることはできないのか? というと、上手な製作者の楽器とは、うまい具合にそれが出来ているのです。それが技術の差です。
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