一週間前にビリ付きが出てしまったチェロの調整をお受けしました。
このチェロ以外でも、これまでに何度もビリ付きの原因を探すのに苦労した経験があったので、お客様にもその難しさを説明してお受けしました。特に、内部に修理がたくさん施されている楽器の場合には、どこが原因になっていてもおかしくはないです。かといって、安易に分解するわけにもいきません。
かと思うと、驚くほど単純な部分がビリつきの原因だったりすることもあるのです。例えば、弦が古くなって巻線がビリ付きの原因だったり。
今回も、内視鏡を使って内部の点検をしたり、指の関節が痛んでしまうほどあちこちをコンコン叩いてみたり・・・。可能性の高い上駒の溝を修正してみたり。もちろん、弦も交換しました。
そんなこんなをしている内に、ビリ付きは収まったのです。原因がピンポイントで特定できなくても、なんとなく症状が出なくなる事も多いものです。
そうして今日お渡しするときに、お客様が弦を弾いたら、おもいっきりビリ付きが出ていました。昨日最終チェックをしたときには出ていなかったのに・・。ビリ付きの原因探しって、このようにとても難しいのです。
チェロを購入するときには、大きな修理が施されているものは避けた方が無難だともいます。もっとも、一般の方が修理の状態や、内部の状態を想像するのは不可能に近いのですが。
補足:ビリ付きの場所を特定するのが難しいのは、手で押さえたりしてビリ付きが収まったら、その部分がビリ付きの原因の箇所だと思っている人が多いのですが、そうとは限りません。楽器の一部分に負荷をかけることで、楽器全体の共鳴ポイントが変化して、結果的にたまたまビリ付きが収まったかもしれないからです。
補足2:なぜヴァイオリンと比べて、チェロに「ビリ付き」問題が多いのかというと、ヴァイオリンと比べてチェロは低い音で大きな振動(すなわちビリ付き)をする上に、楽器が比率的にヴァイオリンよりも薄いのです。だから壊れやすいのです。だからチェロにおいて、ビリ付きが出やすいというのは、ある意味、仕方が無いとも言えます。