ある鉄道が廃止になることになって、最終運行の時にはマニアが押しかけるのが常です。それまではガラガラだったのに。

 また、ある自動車の製造が停止になると発表された途端、急に注文が殺到すると言うこともよくあります。ホンダのS660なんてそうです。

 この気持ち、私も判らないでも無いです。
 それまでは「いつでも買えるから、今でなくても」と思っていたのが、もう買えなくなると知って、急いで発注しても時既に遅し。皆、考える事は同じなのです。

 しかしそれって、まさに「良質なフェルナンブコの弓」においても言えるのです。

 もちろん、「フェルナンブコ材料を使った」という弓だけだったら、これからも入手できます。しかし、「フェルナンブコ材の、当たり材」という弓は、年々少なくなっています。ある意味、もう手遅れとも言えます。

 今のこの最後の貴重な時期に、良い弓を購入しないで、カーボン弓なんて検討している意味があるでしょうか? もちろん良質な本物の弓はとても高いです。しかし、そんなの10年で元が取れるくらいの、きちんとした性能を兼ね備えています。

 もしも、お友達で私の工房で弓を購入した方がいらしたら、弓の性能について感想を聞いてみてください。おそらく、皆さん「購入するときには価格が高くて迷ったけれど、その性能がそれまでと全然違う」とおっしゃるはずですから。

 とにかく、時間は無いのです。楽器本体も年々高価になっていますが、弓はさらに深刻です。

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