これはチェロだけの話ではないのですが、多くの楽器の駒って、弦高を正しく調整すると4番弦側に対して1番弦側が大きく下がってしまいます(駒上部のアールが大きく傾いています)。

 そのような駒に見慣れていると、特に傾いているとは思えないのですが、駒を外して単体で観察すると大きく1番弦側に傾いています。

 そのような駒の何が悪いのかというと、1番弦を弾いたときに弓が楽器のくびれた部分(C字部分)にぶつかってしまうのです。またチェロに多いのですが、1番弦(A線)が駒の弦溝から外れてしまいやすくなってしまうのです。

 だから多くの調整では、1番弦側の駒を(弦高を)かなり高めに調整する傾向にあります。しかしそれでは弾きにくいのです。

 それに対してカントゥーシャ作の楽器は、楽器の設計時点で設計理論として既にそのような対策もされていて、ネックの設計、指板の設計など精度の高い製作が行われています。だから駒のアールが1番弦と4番弦側でそれほど大きく傾いていないのです。

 それによって長年にわたって楽器が安定した状態を保つことが出来るのです(それ以外のたくさんの要素の中の、ほんの一つの要素ではありますが)。

 私がカントゥーシャ工房で感心した技術はたくさんありますが、この「駒のコントロール」もその一つです。

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