時々、駒の位置が前の方へ(指板の方へ)ずれてしまっている方がいます。
この「駒のずれ」には二種類あって、一つは自然とずれてしまっている場合と、もう一つは所有者の勘違いによってずれている位置が正しいと思い込んでしまっている場合です。
最初の、自然とずれてしまうというのは、良くあることです。というのは、交換したばかりの新しい弦は伸びるので、伸びた弦を糸巻きで調弦する都度に駒は前の方に引っ張られてしまうからです。だから駒は基本的に前方向へ傾くか、またはずれてしまうのです。
二番目の「駒の位置を勘違い」というのは話がちょっと複雑です。楽器のf孔がずれていたり、表板のニスについている駒を立てた跡が間違っていたり、所有者が駒の位置を勘違いしていたり・・。いずれにせよ、複雑な要因が絡んでいます。
さて、このように駒の位置がずれていることは多いのです。ヴァイオリンの場合で1~5mm、チェロの場合で3~10mm弱ずれていることは珍しくありません。
そうすると、相対的に魂柱の位置が、それだけずれてしまったと同じ効果(すなわち音の劣化)が出てしまいます。魂柱は1mmの移動でも音に影響します。それが数mmなんて、以前の音調整を台無しにしているのと同じです。
もっとも、駒のずれが、楽器の破損に即繋がるという事はありません。
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