最近、朝のNHK-FMでは日本音楽コンクールの予選(?)を行っています。いつものように車で乍ら聴きしているのですが、皆上手で、「わざわざ順位をつける意味があるのか?」と思ってしまいます。

 特に私の専門外の管楽器の演奏などは、今更ではありますが、同じ楽器なのに音色が違ったり、または演奏の仕方も違ったりと、面白い発見があったりします。これは私が管楽器の素人なので、逆に素直に聴けているからです。

 一方、弦楽器の演奏になってしまうと、変な粗探し(?)をしながら聴いている自分に気づきます。音楽って、もっと単純に、素直に聴くべきなのに。

 まあ、しかたがありません。それが私の仕事なので。

 さて、音楽コンクールの意義についてはここでは保留として、メリットもあります。それは、全く同じ環境で録音できているという事実です。さらに課題曲として同じ曲を弾く場合など、完全に「音の比較」が出来るのです。ちなみに、演奏素人の私には「演奏の比較」は出来ませんので、私の比較はあくまでも「音」のみです。

 同一録音による音の比較って、有りそうでなかなか無いものなので、そういった意味では音楽コンクールは面白い実験の場です。出場者当人達は、そんな興味本位で聴いて欲しくはないでしょうが。

 さて、先ほどにも言いましたように、最終予選にも通った人たちの演奏レベルは、皆素晴らしいと思います。

 ところが、音に関しては、やはりそれぞれで違います。その違いには基本的に、「音色」と「ダイナミックレンジ(音量も含む)」の二つの要素があるのです。

 「音色」に関しては、コンクールという短期決戦の場合には多少硬すぎるくらいの音が好まれるとされています。長時間弾き続けたり、または長時間聴き続けると疲れる音なのですが、短時間という前提では、刺激的に感じて目立つのです。ただし、そのような表面的な音の操作が、審査員に評価されるかどうかは、その時によって(審査員によって)異なるので私には何とも言えません。

 次の要素は「ダイナミックレンジ」です。私がいつも感じるのは、この部分の差なのです。

 例えばダイナミックレンジの狭い音で演奏していると、いくら上手な演奏であったとしても、まるでBGMのように流れるだけなのです。しかし、ダイナミックレンジのある音の場合には、ある部分でハッとするのです。すなわち、演奏に引きつけられるのです。

 このダイナミックレンジを「表現」と思い込んで、間違ったパフォーマンスだとか、アタックをかけるような激しいボウイングを行っている演奏者がたくさんいるのですが、それでは雑音こそ出るのですが、ダイナミックレンジの広い音はでないのです。

 これは「圧」の違いで有り、もっと簡単に言えば弓の性能の違いなのです(もちろん楽器の違いもありますが)。

 この辺りの物理的説明に関して、もう30年近く説明をつづけているのですが、プロの演奏者、またはプロを目指している演奏者ほど「拒絶」します。なぜならば、そのような人々は「科学」とは縁遠い場所に居る事を芸術と勘違いしているからです。

 ほんの少し昔には、スポーツも同様でした。

 

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