アマチュア演奏者の発表会は、私にとっても、とても勉強になります。アマチュア発表会とは、ある意味「演奏課題の総展示会」とも言えるからです。
これはバカにしてそう例えているのではありません。向上するために必要な冷静な「観察」であり、それは逆に高度な内容でもあるのです。
さて、アマチュア演奏者の演奏には、素晴らしい部分と、イマイチの部分があります(これはプロの演奏者でも同じです)。これは前後の奏者と比較すると、その良い分部分と悪い部分とが際立ちます(補足:誰が上手とか下手とか言っているのではありません。ある微小部分の比較の話であって、総合的には皆同じくらい上手です)。
誤解の無いように補足しますが、それぞれの演奏者が皆、素晴らしいのです。下手くそな演奏者など、私は見たことがありません。舞台に立つことは、それだけでも凄い事です。
逆の事も言えて、完璧な奏者も見たことがありません。
それぞれの演奏者が、それぞれで長所と短所があるのです。
さて、本題の「縦に弾く」という内容ですが、これは私が常々主張している、「弓の圧力」の事です。
指使いも上手で、音程も素晴らしい、一見上手な演奏の方(それ自体がなかなか出来ることではないのですが)でも、楽器の表面を撫でるようなボウイング(すなわち「横に弾く」)だけで演奏すると、音の強弱が無いので聴衆に訴えかける物が少ないのです。
音の強弱(表現)を弓のスピードで行おうとしているのですが、弓の長さには限界がありますので、本人が思っているような表現は生まれません。せいぜいアタックとかの刺激表現が限界なのです。
これはプロの多くの演奏者でもそのような傾向を見受けられます。
それでは音の表現はどのようにして生むのかというと、「縦に弾く」事によって生まれるのです。すなわち、圧力方向の演奏です。
注:大きな圧力をかけ続けて弾くべきと言っているのではありません。オーディオアンプのボリュームを回すように、圧力の表現(操作)が物理的にできなくてはならないのです。これが「縦に弾く」または「縦に表現する」です。
そしてそれを行うためには、「真の意味での良い弓」が絶対に必要となります。上手な演奏者(プロも含めて)ほどそれを知らない方ばかりです。なぜなら、この業界、「道具や運動の科学的意味」の分野が全く育っていないからなのです。ここが、私は「スポーツ界を身ならべき」と主張している部分です。
だから私は「才能や時間がもったいない」と感じるのです。
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