これまでの職人の世界では「弟子としての修業」という行動が当たり前でした。師匠にある一定期間ついて、技術を学ぶ行為です。

 しかし多くの方は「修業」という言葉を誤解していたり、テレビなどでは面白おかしく脚色したりしてしまっているのです。古くさく、時代遅れの(低社会層の)行為と思われてしまっています。

 しかし、以前にも書いた事がありますが、「弟子としての修行期間」というのはとても効率的な勉強の方法なのです。「自分の考えをぐっと抑える事によって、他人に外部から自分の殻にひびを入れてもらう」という期間なのです。

 ところが、意外に思われるかもしれませんが、我々職人の世界も、最近では修業を行わないで技術を習得した、すなわち師匠のいない職人がとても増えてきました。具体的には専門学校だとか、塾みたいな短期講習だとか、ネット上からの独学的な修得方法です。

 これらが悪いとは言いません。しかし、長い期間師匠のもとで修業した職人と比べると、多くの限界があるように感じるのです。

 

 話は一般の方、すなわち今回の表題の「現代人」に戻ります。

 「現代人」の特長は、「高学歴」と、「情報化」です。簡単に言ってしまえば、いかに情報を収集して、それを知識のように立ち振る舞った人が、出来る人と思われる社会です。またはそのような人が得する社会です。

 だから皆、必死で情報収集をしているのです。そしてそのような自分に自己満足(自己肯定)している人がとても多いと感じます。

 しかし、これまでに何度も私が主張していますように、自分の考えでは自分の殻にひびを入れることは出来ません。

 他人(もちろん誰でも良いというものではありません)に自分の殻を叩いてもらう行為をしてもらえる機会が必要なのです。これが我々の場合「修行期間」です。
 いぜんならば会社などの職場でも、上司や先輩が厳しく、粘り強く指導したりしたのでしょうが、今はそんなことは出来なくなっているらしいです。下手をすると訴えられてしまいます。

 現代人こそ、修業が必要と感じます。だから「人との関わり」を大切にしたり、求めなければならないと一貫して主張しているのです。

 

補足:その「修業」って何か?
 端的に言うと、自分の考えを一旦グッと我慢して、人の話に耳を傾けることです。そして、その言葉を信じて実行してみることです。

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