工房にいらしたお客様から「性能の高い楽器とは?」って質問されることは多いです。

 その答えは簡単ではありません。楽器の根本的なキャラクターとか、演奏者側の好みとか、数多くの複雑な要因がからんでいるからです。だから算数の答えのように、○か×か、またはイエスかノーかでは答えられないのです。

 だからその不確定さを悪用して、大した性能でも無い楽器を良い楽器として高価で売りつける業者がいたり、その逆にブランドや情報操作に影響されて、性能の低い楽器を良い楽器と思い込んでいる人もたくさんいます。

 これが、昔からの弦楽器業界です。科学(または工業)的な考え方よりも、権威重視なのです。文系的な考え方で成り立っています。

 良い楽器の明確な答えが無い以上、それでは何でもありなのか?というと、そう言っているわけではありません。

 重要なのは「優れた音響性能」という考え方です。例えば、周波数特性、発音レスポンス、ダイナミックレンジ、音程の正確さ等です。

 先日YouTubeで中級価格帯クラリネットの吹き比べ動画をみました(結果的に関連動画も含めて似たような吹き比べ動画を数本観ました)。具体的な機種をあげると、ビュッフェ・クランポンR13前後の価格帯クラスでした。私はクラリネットの事は全く判りませんが、たぶん良い意味でのまともな中級グレードみたいです。

 私の興味は、管楽器において楽器の性能の差をどのように感じているのか? またはどのように例えるのか? または、実際に出る音に違いを感じるのか? でした。

 音に関しては、テレビでの音では私には違いは判りませんでした。奏者が吹きやすそうにしているとか、音程を出しやすそうとかの表情では若干の差を感じましたが、音色自体では、私には性能の差は感じませんでした。

 さて重要なのは、プロの奏者が楽器の差をどう表現したかです。
 複数の同様の動画を観ましたが、基本的に次の二つの表現が多かったです。

「音程の取りやすさと、各音のバランス」、「吹いたときの抵抗感」という表現です。

 前者に関しては、当然の感想だと思います。そして後者に関しては、弦楽器の性能を説明する上で私が説明している内容と一致していると感じました。

 それは「ダイナミックレンジ」の事だと思います。 おそらく、弦楽器も管楽器も、基本的な楽器としての音響原理は共通なのでしょう。

 この「抵抗」を音の出にくさと勘違いして、箱鳴りのような弦楽器を購入してしまっている人もとても多いです。だから自分で知った気になって選ぶと、とんでもない無駄な買い物をしてしまうのです。

 技術のある専門家を頼りましょう。そういう人との信頼関係を築くのが、一見遠回りのようでいて「良い楽器」との縁をたぐり寄せる一番の近道です。

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