ボウイングの練習において、よく「えぐるように」とか「自然に吸い付く」とか、「弓が震えないように」とか様々な表現がされます。
 ところが、その本当の意味を知っている演奏者(または先生)が何人いることでしょうか?

 ほとんどの演奏者(上手な演奏者であっても)は弓の理論を知ってはいません。なぜならば、そのような授業(教育)を受けていませんし、必要とも思っていないからなのでしょう。しかし、その弊害は確実にあります。具体的には、先生によって言っている事がバラバラなのです。または、性能の低い弓を良い弓と勘違いして、性能の低い弓をわざわざむちゃくちゃ高い値段で購入してしまったり、さらに酷いことにそれを生徒に売ったりしています(偉い先生からゆずり受けた弓で、本当に性能の高い弓はまれと言っても過言ではありません)。もっと酷いのは、その性能の低い弓で効率の悪い練習をして、ただでさえ短い人生を非効率的に使ってしまうことなのです。

 ほんの一例ですが、「弓の反りに従って、えぐるように弓を動かす」という演奏者は多くいますが(私も弓の試奏時にそのようにアドバイスします)、しかしこのようなボウイングは弓竿の腰の強い、高性能な弓でしか原理的に実行することは不可能なのです。

 なぜそうなのか?本当にそうなのか?

 一にも二にも、「理論」なのです。逆に、自分の能が理論(仕組み)を理解した途端、見える世界が全く違ってくるのです。

 しつこいようですが、「感覚論」ではいけません、「物理(理)」なのです。感覚論は、人(先生)によってまちまちですし、人(生徒)によって理解の仕方も様々です。自分をごまかすことだって、いくらでもできるのです。さらに、人をごまかすことだっていくらでもできるのです。

 私の言っている事が怪しいと思うのでしたら、是非ともお友達と一緒にいらして(冷静な第三者として確認してもらうために)、私の説明を聞いた上で弓(または楽器)の試奏をしてみてください。今までとは別次元の自分を確認できることでしょう。
 私がその辺の商売人ショップと同じでしたら、わざわざお客様のプライドを傷つける(逆なでする)ような事は絶対に言いません。お客様のプライドを”よいしょ”した方が、よほど気分良く(いい加減な商品さえも)購入してくださるものなのです。

 しかし、それでよいのでしょうか?

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