たくさんの楽器を修理・調整していると、所有者の扱い方(または弾き方)によって楽器の傷む部分に大きな違いが出るのを実感します。

 例えばチェロの場合にも、膝で支える部分のニスの磨り減り度合いは、人によって大きく異なるのです。もちろんニスの質によっても違いは出るのですが、ニスの硬さが同じくらいの楽器でも、膝のあたる部分の損傷具合には、人それぞれに違いがあります。

 逆に考えると、膝で挟み込む、その強さにも演奏者の特徴が有るのでしょう。

 ヴァイオリンの場合に、肩当てをはめる、その強さで音が変わるのと同じで、チェロの場合にも、膝で挟み込む強さによって音は変わります。

 基本的(原理的)には、強く挟み込んで楽器を固定して弾くと、音は柔らかくなるはずです。そして、できるだけ挟みこみを小さくして、チェロがフリーに近い状態で弾くと、明るい音が出るはずです。

 このような音響的な原理を使った音の変化を利用することも、演奏のテクニックの一つと言えると思います。

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