ここ数年、ちょっとした「ハイレゾ(広い周波数帯域の、音の良い音楽フォーマット)」ブームです。そしてハイレゾ対応をうたった、チープな音響機器もたくさん発売されています。

 そんな音響機器を売りたいがために、いつもの様にメーカーが、いいかげんな宣伝文句をつくり出して、消費者は信用してしまうのです。もちろん、詐欺的な嘘ってわけではありませんので、そこが微妙なのです。

 例えばよく聞くのは、「生のヴァイオリンは人間の聞こえる周波数の20KHzを大きく越える周波数まで出ているのです。今までのプレーヤーでは、本来のヴァイオリンの音の一部だけをぶつ切りにして聴いているようなものなのです。その点、広帯域まで再生可能なハイレゾは・・・」みたいな感じです。

 上記の表現、嘘ではないです。しかし、かなり怪しい表現です。

 生のヴァイオリンの音を測定したことがありますか?E線の開放弦を強く弾いたりすると、確かに20KHzを大きく越える超高周波数成分まで音が出ています。しかし、ポジションを押さえて、通常の演奏をした途端、周波数成分はぐんと低くなってしまうのです。G線、D線などの低い弦になると、さらに顕著です。

 しかも、ホールなどの超高周波成分を吸収する場所では、さらに超高周波数成分は低くなります。だからホールでの演奏は聴きやすく心地よいのです。もちろん、ホールの音は「帯域が低くなりすぎる」と言っているのではありません。「心地よい音だけを響かせる」という感じなのです。

 このように、ヴァイオリンの現実の生音が、超高周波数成分を顕著に含んでいるというのは間違いです。

 私は「ハイレゾ」という音響フォーマットを否定しているわけではありません。それどころか、そのような優秀な音響フォーマットには賛成です。しかし、それを利用して、商売に結びつけようと安易な宣伝をしている大メーカーの広告で溢れていることが危険なのです。

 これと全く同じで、「アナログレコードは、デジタル音と違って、連続した超高周波数成分まで再生可能だから音が良い」という事を言っている人もいます。特に最近のアナログ回帰ブームで、よく耳にします。しかし、このことも1/3は正しくても、2/3は??です。

 

 人は、見えない真実よりも、見える効能(仕様)に頼りたくなるものなのです。

 

 しかし、それでは音の本質は、音の本当の楽しさはわかってきません。このことを書きだしたら、本を一冊書けます。

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