先日、私の工房で良い弓も、良いヴァイオリンも購入してくださったお客様が、テレビ演奏会で弾いていたソリストの演奏について、「弓の性能が低いから、良くない弾き方をしているのが見えるようになってきました。佐々木さんのおっしゃるように、ソリストクラスでも意外とちゃんと弾いている人って少ないんですね」と、おっしゃいました。

 自分が弾けるかどうかは別として、実際に判るようになるものなのです。

 この「勘違いをしているのに、自信満々で弾いている上手な演奏家」を研究対象として呼んできて、スーパースロー撮影などをして、弓の実性能の低さなども考察しながら考察したいところです。そうして発表すれば、明解です。

 ところがそんなこと出来るわけがありません。

 音の悪い数億円の名器を、「音が悪い」って結論を出せないのと同じです。様々な利害関係が絡み合っているから、そんな事出来るわけがないのです。

 勘違いしている有名演奏家はもちろん、音大生だって無理というものです。皆、プライド高いですからね。

 この「勘違いしている上手な人」って言うのは、何も批判しているのでも、笑っているわけでもありません。ご自分の演奏の上達を真剣に求めている人、または悩んでいる人への説明なのです。

 

関連記事: