少し前にあるオケのチェロ協奏曲を聴く機会がありました。

 特にチェロのソリストの演奏は素晴らしく、その演奏家の才能と技術に関しては手放しで「ブラボー」でした。

 ただ、訴えかけるものが小さいのです。

 このような「上手なのに、イマイチ何かが足りない」という経験は、意外と多いものです。

 「またその話か」、と思われるかもしれませんが、演奏のダイナミックレンジが平坦なのです。だから訴えかけるものが小さいのです。

 多くの方はpp側を追求することが「表現」だと思い込んでいます。しかし大きな会場で擦れたひ弱なppって音が届きません。

 かと言って、アタックを付けたffだとか、身体の動き(パフォーマンス)で表現したffなんて、音として出ていません。

 オペラ歌手のような朗々と歌い上げる音こそが本当の「量感」なのです。そしてそれの対比として、ppが存在します。

 なぜそのとても優秀なチェリストの音が「平面的」に聞こえるのか、色々考えながら聴いていました。ある程度の推測はしましたが、確実なことは言えませんのでこの場ではこれ以上の事は言いません。

 しかし、演奏技術の問題では無いということだけは言い切れます。

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