先日のニュースで、国立競技場の解体業者がようやく決まったと放送していました。
また、少し前のテレビ(「ガイアの夜明け」だったかな?)でも、建設業界において「需要があるのに人材不足で受けることができない」という内容の番組が放送されていました。また別の番組では、少量生産を依頼する予定だった町工場が突然廃業してしまって・・・、という内容でした。廃業の理由は、高齢による健康問題だそうです。また、農林業の分野でも同じ事を聞きます。
このように、日本中のあちこちで職人不足が懸念されています。もちろん日本全体の高齢化にも原因はありますが、根本はそれではないと思います。それは日本の国家としての方針が間違っているからです。簡単にいってしまうのならば、大企業志向による職人(技術職、生産家)不足です。
私が子どもの頃には、「日本には資源が無いから、物を作らなければならない」という教育がなされました。「国民一丸となってより良い物を作って、日本を豊かに」という熱意があったと思います。そういう国家戦略(教育もしかり)がありました。しかし一旦国が豊かになってしまうと、効率とか、楽とか、地位とかを考えるようになってしまったのです。それを一番表している言葉は「3K」です。
例えば大企業側も「部品は金を出せば手に入る」と思い込んでいたことでしょう。金さえ払えば、下請け企業はいくらでも製品を納めてくれる。無ければ海外に求めれば良いこと、と。しかし、本当に良いものって、高度な技術をもって作る人がいなくなってしまえば、例えお金を積んでも手に入れる事はできないのです。
現在、かろうじて手に入る「日本の高度な技術力、または生産力」は、戦後や高度経済成長期の前の貧しかった時代に、損得考えずに技術を磨いた先人達の、最後の一滴とも言えます。それらを絶やしてしまったら、日本はどうなってしまうのでしょうか?お金を積んでも、そう簡単に手に入れる事はできないのです。
さて、これ以上の事を私が主張しても、この佐々木ヴァイオリン製作工房のブログにはふさわしくありませんので、当ブログに関係のある内容を書きます。それは、
「高度な技術は貴重なものですから、その技術(者)を大切にしましょう」、「通販なんかで商品を買わず、普段お世話になっている技術者(楽器店)にて買いましょう」。その収入によって、技術者は生きる事が出来て、そのお金で技術を磨く事が出来るのです。私もその内の一人です。私が技術を追求できるのも、弟子を教育できるのも、こうしてブログを書くのにも全てお金がかかる事です。それは私の工房にいらっしゃるお客様のおかげなのです。
「技術」は求めるだけではいけません。皆さんが育てるものです。現在行きつけの楽器店を大切にしてください。
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